はじめに
高齢者の方は、ご自宅で安全に過ごす上で、玄関の上がり框は大きな障壁となる場合があります。足腰が不安定な方な高齢者にとって、わずかな段差でも大きなリスクを伴います。
ご自宅の玄関を安全に出入りできるよう、環境を整えることで、転倒のリスクを低減し、外出の機会を増やすことが可能です。
本記事では、ご自宅内での玄関の上がり框の段差解消の問題に対する解決策として「玄関用踏み台」に焦点を当て、選び方のポイントや注意点、おすすめの製品を紹介します。
介護が必要な家族を持つ方々や、日々の生活に不安を感じている高齢者の方々に、解決策につながりますと幸いです。
玄関上がり框の段差について
玄関の上がり框とは、家の中と外を区切り、雨水や虫が入るのを防ぐためにある小さな段差のことです。
玄関の上がり框は、ほとんどの住宅の玄関にありますが、足腰が弱く、歩行やバランスに不安を感じる高齢者にとって、移動の際に大きな負担となる場合があります。
住宅によって上がり框の高さは様々ですが、安全に生活するためには、段差を解消することが重要です。
玄関用踏み台の設置メリット・デメリット
玄関用踏み台の設置メリット
玄関は家の中でも転倒事故が起こりやすい場所の一つであり、特に高齢者が転倒すると重大な怪我に繋がるリスクが高いため、玄関の安全性を高めることが非常に重要です。
高い上がり框のある住宅では、踏み台を設置することで、高い段差を安全に乗り越えることができます。また、手すりと組み合わせることによって、より安全を確保することができます。
踏み台の設置により、転倒リスクを低減し、怪我の予防、外出の機会の増加による自立支援、そして何よりも利用者のご自宅での生活への自信につながります。
玄関用踏み台の設置デメリット
玄関用踏み台を設置するには、玄関の土間に設置スペースが必要となります。
特に狭い玄関内に設置する際には、靴の置き場所などを利用できるスペースがなくなってしまう場合があります。踏み台を設置する十分なスペースがあるかを事前に確認しておきましょう。
また、玄関は、同居ご家族との共有スペースになりますので、配慮が必要な場合があります。必要以上に大きいサイズの踏み台を設置しないなど環境に合わせた選定をするようにしましょう。
玄関用踏み台の選び方と種類
玄関用踏み台には様々な種類がありますが、ご利用者様やご家族様に最適な踏み台を選ぶ時の注意すべき点をご紹介します。
玄関用踏み台は、玄関の上がり框に適した高さや材質、滑り止めの有無、使用場所の広さ、使用する人の身体状況など、安全で快適な生活を支えるためにも複数の要素を考慮する必要があります。
以下の点に注意して、使用環境に適した製品を選びましょう。
高さと天板サイズの選び方
一般的に販売されている玄関用踏み台の既製品は、高さがおおむね10cm~20cm、天板のサイズが奥行が30~45cm、幅が45cm~90cmの製品が多く見られます。
ご自宅の玄関に適合するサイズの踏み台をお選び頂く際、事前に上がり框の高さやスペースを確認しましょう。
玄関用踏み台 高さの選び方
踏み台の高さは、上がり框の高さに対して半分程度の高さにすると、均等の高さで昇り降りがしやすくなります。
また、高さを数cm刻みで調節可能な製品(アジャスター機能付き)は、使用環境や利用者の身体状況にその場で合わせることができます。設置時に選定ミスの恐れがなくなるため、安心です。
上がり框の高さが40cm程度で、特に高い上がり框の場合は、2段タイプがおすすめです。2段タイプになると、段数が増える分、玄関のスペースを狭めてしまいますので、設置環境に気を付けましょう。
既製品では、ご利用者様の身体状況・玄関の形状に適合しない場合は、オーダーメイドも検討しましょう。
玄関用踏み台 天板サイズの選び方
玄関用踏み台の天板サイズは、一般的に、奥行が30~45cm、幅が45cm~90cmの製品が多く見られます。
奥行や幅が広い製品は、足を着く面積が広いので、身体状況に応じて選定しましょう。
必要以上に大きなサイズを選定すると、玄関のスペースを狭めたり、同居ご家族の使い勝手が悪くなってしまう場合もあります。
設置環境に適合しない場合は、玄関の形状に完璧に合わせたい方、オーダーメイドによる製品の検討もしてみましょう。
玄関用踏み台の材質
玄関用踏み台の材質を3種類ご紹介いたします。価格の違いやオーダーメイド製作の可否、玄関の雰囲気にマッチするかなど、材質によって、使い勝手が変わってきます。素材別の特長は、以下をご参照ください。
木製
木製の玄関用踏み台は、介護の現場でも一般的な材質で、耐久性が高く、安定感があります。天然木製の踏み台は温かみがあり、日本家屋の玄関にもマッチします。
踏み台がずれる心配がある方は、電動ドライバーを使って、L字金具で固定することも可能です。(※ねじ止めするので、上がり框に穴あけが必要になります)
最も一般的な材質なので、高さ調整機能や手すり付きなどの様々なバリエーションの製品があります。また、身体状況や設置環境に合わせたオーダーメイド製作も可能な製品もあります。
プラスチック製
プラスチック製の玄関用踏み台は、軽量で価格が手頃です。
固定することが難しく、踏み台自体の重量が軽量なため、設置場所からずれる可能性があります。安価な分、デメリットもあります。
踏み台の脚部分に滑り止めゴムが付いている製品もありますが、製品の安定性をしっかり確認した上で、選定するようにしましょう。
イレクターパイプ製
イレクターパイプ製の玄関用踏み台は、イレクターと呼ばれる、スチールにプラスチック素材を外側に巻いたパイプ素材を使用しています。
パイプとジョイントを組み合わせることで、様々な形状やサイズにカスタマイズ可能です。天板は、ソフト素材で滑りにくい材質を使用しています。
手すりを付けたり、階段状など様々な形状にカスタマイズが可能なので、ご利用者様の身体状況に合った玄関踏み台をお求めの方におすすめの材質です。
種類別おすすめ商品
木製のおすすめ商品
アロン化成 ┃ 安寿 木製玄関台 1段タイプ
高齢者の安全に配慮したデザインで、高さが12cmの玄関用踏み台です。
踏み台表面に、独自のウレタン樹脂特殊塗装と凹溝で、素足や靴下でも滑りにくい加工を施しています。前面板があるため、踏み台に上がる際、足が入り込まず、足を引っかけて転倒すること防止します。
上がり框部分に固定金具を設置することで、横ずれを防止することも可能です。着脱式の固定金具が付属しており、踏み台を固定金具から取り外すことができる仕様となっているため、掃除の際には、大変便利です。
アロン化成 ┃ 安寿 木製玄関台 高さ調整タイプ
高めの上がり框に対応する高さが調整可能な玄関用踏み台です。
踏み台高さは、設置環境に合わせて、15cm~22.5cm(4段階)で調整することができます。
アロン化成 ┃ 安寿 木製玄関台 2段タイプ
高い上がり框に対応する2段タイプの木製玄関台です。
サイズは、高さ20cm、幅60㎝、奥行は、55cmと60cmの2段階に調節が可能となっております。
木製で安定性の高い2段タイプをお考えの方におすすめの製品です。
パナソニック ┃ 木製玄関ステップ台1段
縦横どちらの方向でも取り付け可能な玄関用踏み台です。
天然木を使用しており、玄関にマッチするデザインとなっています。
踏み台の高さは、脚部を3段階(8cm、15cm、20cm)で調整することが可能となっています。
天板サイズは、幅60cm×奥行35cm、幅90cm×奥行35cm、正方形に近い40cm×35cmの3種をラインナップしています。
谷村実業┃ 手すり付玄関台
踏み台に手すりが備わっているタイプです。
靴の脱ぎ履きや上がり框を昇降する時は、姿勢を崩しやすいので、手すりに摑まると安全な動作につながります。
壁に手すりを取り付けられない場合などに有効な製品です。
サイズは、玄関の広さに合わせて、60cmと90cmがあります。
プラスチック製(樹脂製)のおすすめ商品
ご使用上の注意点
踏み台を使用する際は、踏み台の端や角を避け、中央部を踏むよう心掛けましょう。
また、手すりなどにしっかり掴まりながら移動することで、さらに安全にご使用できます。
踏み台は安定した平らな場所に設置し、ガタツキが心配な場合は、アジャスター機能付きの製品を選びましょう。
踏み台と床の間に隙間がないようにし、踏み台が設置場所からずれる心配がある場合は、しっかりと固定することをおすすめします。
定期的に踏み台を点検し、ずれていないかや破損していないかを確認することも安全にご使用頂く上で大切です。
まとめ
本記事では、玄関用踏み台の選び方、使用時の注意点、おすすめの製品について紹介しました。
適切な玄関用踏み台を設置することで、転倒リスクを減らし、外出の機会を増やすことができ、結果として自立支援につながります。
木製、プラスチック製、イレクターパイプ製といった様々な材質の介護用踏み台があり、それぞれの特性を理解し、使用する人の身体状況や設置環境に合わせて選ぶことが重要です。
本記事が、高齢者本人や介護が必要な家族を持つ人々への解決策の一助になれば幸いです。
福祉用具専門相談員9年目。日々の業務での福祉用具に関する知識や様々な情報を発信します。ツイッターも見て頂けると嬉しいです。
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