はじめに
自宅の廊下や通路が狭く、車椅子を使った移動に苦労する——介護するご家族が抱える悩みのひとつです。
標準サイズの車椅子では、曲がり角でつかえてしまったり、壁に手が当たりやすかったりと、利用者だけでなく介助者にとっても移動が負担になる場合があります。
今回ご紹介するのは、通路幅が限られた住環境でも扱いやすい“コンパクトサイズの車椅子”です。
本記事では、狭い廊下でもスムーズに使える車椅子選びのポイントをご紹介します。
狭い廊下で車椅子が使いづらいと感じる理由
廊下幅と車椅子幅のバランスが合っていない

車椅子はタイプによって幅が大きく異なるため、廊下幅とのバランスが合わないと通行が難しくなります。
廊下が狭かったり、幅広の車椅子を使っている場合、車椅子と壁との間にほとんど余白がなく、少しの操作でも左右の壁に触れやすくなります。
移動中に車輪や手が壁へぶつかりやすく、スムーズに進みにくい状態になります。
自走される場合は、壁に手が当たって痛めてしまうこともあり、介助者が押す際も細かな操作が必要になり負担が大きくなります。
曲がり角が多い住宅では旋回性が重要

ご自宅内の廊下では、90度に曲がる角がある間取りも少なくありません。
車椅子は旋回半径が大きいほど方向転換に広いスペースが必要になるため、狭い廊下では回りきれず、いったん後退してから再度切り返す必要が出ることもあります。
介助者の負担が増えやすい

車椅子幅が広いと、壁にぶつけないように進行方向を細かく調整する必要があり、介助者の負担が増します。
扉の出入りや家具の間を通るときは、数センチ単位の微調整が求められ、身体的・精神的な疲れにつながりやすくなります。
コンパクト車椅子のメリット
狭い廊下や室内でも動かしやすい
コンパクトタイプの車椅子は全幅が小さく抑えられており、廊下や室内での取り回しが格段に向上します。
全幅が小さいモデルであれば、一般的な戸建てやマンションの廊下でも通行できることが多く、ストレスなく移動できます。
家具配置を大きく変えずに使える場合も
標準サイズの車椅子では家具を移動しないと通れない場所もありますが、コンパクトタイプであれば環境を大きく変えずにそのまま使用可能な場合もあります。
生活動線を維持しながら快適に車椅子を使えるのは大きなメリットです。
介助者の負担軽減

車椅子幅が小さいことで、壁や家具にぶつけるリスクが軽減され、介助者の操作が楽になります。
限られたスペースでも押しやすく、方向転換もスムーズ行うことができれば、介助負担を軽なることが期待できます。
コンパクト車椅子を選ぶときのポイント
利用者の身体状況に合った座幅車椅子を選定する
車椅子は利用される方の身体に合ったサイズ選びが何より重要です。
座幅は全幅に直結するため、狭い廊下での取り回しにも大きく影響します。
一般的には「お尻の幅+2〜3cm」が適切とされ、これより狭い座幅を選ぶと、座位が窮屈になったり、お尻が収まりにくくなる場合があります。
車椅子選びは、コンパクトさだけを優先すると快適性が損なわれるため、身体に合ったサイズを確保しつつ、使いやすい幅の車椅子を選ぶことが大切です。
通路幅をチェックする
車椅子を選ぶ際は、まずご自宅の廊下や通路の幅を正確に測りましょう。
一般的な住宅の廊下幅は約75〜80cmで、幅広タイプの車椅子では余白がわずかになり、壁や手が当たりやすくなります。一方、コンパクトタイプであれば通過時にゆとりが生まれ、廊下での操作もしやすくなります。
通路幅は“最も狭いポイント”を基準にすることが重要で、途中にある柱の張り出しや曲がり角がボトルネックになるケースもあります。
実際にメジャーを使って計測しておくことで、選ぶ車椅子の幅をより具体的にイメージでき、安心して選定できます。
車椅子の全幅をチェックする
コンパクトさを重視する場合、まず確認したいのは車椅子の“全幅”です。
自走式と介助式では幅の目安が異なります。
・自走式(利用者が手でこぐタイプ):後輪が大きくハンドリムがあるタイプ。全幅は55〜65cm程度が一般的です。
・介助式(介助者が押すタイプ):後輪が小さくハンドリムがないタイプ。全幅は48〜55cmとよりコンパクトで狭い通路に向きます。
旋回性能で選ぶなら6輪タイプがおすすめ
6輪タイプは方向転換がスムーズな車椅子なので、通路幅が狭いご自宅での利用におすすめです。
車軸位置が一般的な車椅子よりも前方に設計されているため、回転径が小さく、狭い廊下でも省スペースで向きを変えやすい構造になっています。
ただし、6輪タイプは屋外では不向きな車椅子なので、屋外兼用で使用を想定している場合は注意が必要です。
コンパクト車椅子のおすすめ製品(自走型/6輪)
室内の狭い通路に適した小回り抜群の6輪タイプ
SKR-5(自走型)/ ミキ
特徴
・従来の6輪車いすの弱点を補完し、段差越えや不整地でも安定した走行をサポート
・トレーリングアーム式サスペンションにより、常にタイヤが地面に接地しやすく転倒リスクを抑えやすい構造
・小回り性能が高く、狭い室内でも取り回ししやすい6輪タイプ
重量
16.1kg
座幅
420mm
前座高
435mm(クッション込み:475mm)
全長
950mm
全幅
580mm
ネクストコア・くるり(6輪)自走型 NEXT-71B/松永製作所
特徴
・最大約15cmのコンパクト化で狭い通路でも取り回ししやすい
・実用回転半径が約450mmと小さく、90cm幅の廊下でも方向転換しやすい
・前後キャスターの円盤バンパーが家具や壁の接触を軽減
・フットサポートを従来より約12cm前寄りに配置し、安定した座位姿勢を保ちやすい
カラー
オレンジ(F-1)、ブルー(F-2)、ライトグリーン(F-3)、グレー(F-4)
座幅
400mm
前座高
410〜430mm(クッション含めない高さ)
全長
860mm
全幅
580mm
※HBモデルは、後輪がハイブリッド(ノーパンク)仕様です。
ウルトラ 自走用 NA-U6/日進医療器
特徴
・家屋内で扱いやすい6輪タイプで、狭い通路でもスムーズに操作しやすい構造
・壁や家具にぶつかりにくい押し手グリップ形状で、介助者も扱いやすい
・折りたたみ可能で、収納や持ち運びがしやすい軽量モデル(13.7kg)
重量
・13.7kg
カラー
・インディゴ
・ワイン
座幅
・40cm
全幅
58cm
前座高
・38/40/42cm
全長
91cm
コンパクト車椅子のおすすめ製品(自走型)
室内はもちろん、外出先でも使いやすいコンパクト車椅子
シン・ウルトラ NA-SU2W/日進医療器
特徴
・軽量フレームで取り回しがしやすく、室内外でスムーズに操作できる
・背張り調整機能つきで、体に合わせたフィット感を得られる
・足こぎもしやすい前座高設計で、自立的な移動をサポートする
素材
アルミ
カラー
テッコン、カキチャ
重量
14.2kg
座幅
40cm
全幅
55cm
前座高
42cm
全長
98cm
ミキ CRT-SG-3(自走型)
特徴
・全幅550mmのコンパクト設計で狭い通路でも取り回しやすい
・スイングアウト仕様で乗り降りがスムーズ
・ワンタッチキャスタでキャスタの着脱が簡単
重量
11.7kg
座幅
400mm
全幅
550mm
前座高
435mm
全長
960mm
コンパクト車椅子のおすすめ製品(介助型/6輪)
室内の狭い通路に適した小回り抜群の6輪タイプ
SKR-6(介助式 6輪車椅子)/ミキ
特徴
・トレーリングアーム式サスペンションにより段差越えがスムーズで、6輪でも安定した走行が可能
・ホイールベースを短縮した設計で回転半径は約55cmと小さく、狭い室内でも小回りがしやすい
・前輪キャスターが常に地面へ接地しやすい構造で、段差での“空回り”や不安定さを軽減
重量
15.2kg
座幅
420mm
全幅
560mm
前座高
435mm(クッション込み:475mm)
全長
915mm
ネクストコアくるり NEXT-81B/松永製作所
特徴
・全長83cmのコンパクト仕様で、90cm幅の廊下でもその場で旋回しやすい設計
・折りたたみ時は奥行き約15cmまで省スペース化でき、収納性に優れる
・前傾姿勢になりにくい構造で、狭い場所でも安定した座位を保持しやすい
・脚部2段階収納や円盤バンパーなど、壁や障害物への接触を抑える工夫を搭載
素材
・フレーム:アルミ
・シート:ポリエステル
カラー
オレンジ(F-1)、ブルー(F-2)、ライトグリーン(F-3)、グレー(F-4)
重量
18.0kg
前座高
430mm
座幅
400mm
全長
860mm
全幅
580mm
※HBモデルは、後輪がハイブリッド(ノーパンク)仕様です。
コンパクト車椅子のおすすめ製品(介助型)
室内はもちろん、外出先でも使いやすいコンパクト車椅子
シン・ウルトラ NAH-SU2W/日進医療器
特徴
・全幅49.5cmのスリム設計で狭い通路や室内移動でも扱いやすい
・背張り調整とクッション仕様により、姿勢を安定させやすい
・フロントワイドフレームで足元の移乗スペースを確保しやすい
・折りたたみ時は全幅26cmとなり、収納性に優れる
素材
・フレーム:アルミ
・シート:布張り(3Dバックサポート採用)
カラー
テツコン(鉄紺)、カキチャ(柿茶)
重量
13kg
前座高
420mm
座幅
400mm(430mmモデルも有)
全長
980mm
全幅
495mm
CRT-SG-4/ミキ
特徴
・全幅49cmとスリムで、室内や狭い通路でも取り回しがしやすい
・重量11.3kgと軽量で、持ち運びや折りたたみ収納が簡単
・アームサポートが跳ね上げでき、ベッドや側方からの移乗がスムーズ
・フットサポートは外側へスイングアウトし、移乗動作の妨げになりにくい
素材
・フレーム:アルミ
カラー
紺(A-16)
重量
11.3kg
前座高
435mm
座幅
400mm(内寸/アームパイプ内側)
全幅
490mm
全長
960mm
まとめ
コンパクト車椅子は狭い廊下や通路でも扱いやすく、自宅での移動をスムーズにする選択肢です。
以下のポイントを押さえることで、住環境に適した1台を選びやすくなります。
・通路幅を正確に測り、最も狭い部分を基準に検討する
・利用者の身体に合った座幅を優先しながら、全幅もバランス良く確認する
・旋回性を重視する場合は、取り回しに優れる6輪タイプも候補に入れる
住環境が狭い場合でも、車椅子の幅や構造を工夫することで移動の負担が軽くなることがあります。
ご自宅で安心して使える車椅子を選ぶための参考となれば幸いです。
介護マーケットを運営しているもっちゃんといいます。
このブログでは、介護に関わるご家族や支援をされている方に向けて、介護ベッドや靴、手すりなど、日常で役立つ介護用品の情報をまとめています。
これまで多くのご家庭や施設で介護用品の選定をお手伝いしてきました。
現場で感じた体験をもとに、記事を書いています。
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「商品がたくさんあって違いがよくわからない」
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