はじめに
「たった数センチの段差なのに、毎回車椅子を持ち上げるのは限界…」
「種類が多すぎてどれを買えば失敗しないの?」とお悩みではありませんか?
わずかな段差でも無理に越えようとすると、介助者の腰痛や、乗っている方の転倒事故につながることがあります。
また、サイズを適当に選んでしまうと「引っかかってドアが閉まらない」という失敗も。
この記事では、数多くのバリアフリー環境をサポートしてきた福祉用具専門相談員が「車椅子用段差スロープ」についてご紹介します。
- 段差スロープ選びで失敗しない3つのポイント「高さ・素材・角度」
- 室内用・屋外別のおすすめ段差スロープ
- 段差スロープのズレ対策と、段差スロープ移動時の介助方法
段差スロープのサイズ選びで迷ったら、「段差より数ミリ低め」を選ぶのが失敗しないポイントです。
また、「賃貸住宅」や「両面テープやビス止めなどの固定作業が手間な方」には、置くだけでズレにくい「ゴム製」がおすすめです。
数センチの段差が車椅子移動の負担に

車椅子生活では、ドアの敷居や玄関先のちょっとした縁石の「数センチの段差」が移動の負担になります。
ここでは、段差で生じる「2つの負担」について見ていきましょう。
毎回持ち上げる介助者の腰への負担

「たった2〜3cmの段差だから、その都度持ち上げればいい」と最初は思っていても、それが1日に何度も繰り返されるとなるとストレスを感じやすくなります。
車椅子本体の重さに乗っている方の体重が加わると、ちょっと前輪を浮かせるだけでも力が必要になります。
奥様がご主人を介助するような「老老介護」のケースや、小柄な女性が介助をする場合、毎日何度も「よいしょ」と持ち上げる動作は、手首や腰に疲労を蓄積させてしまうこともあります。
無理に段差を越える時の不安

段差のたびに持ち上げるのが大変だからと、勢いをつけて前輪(キャスター)を浮かせ、そのまま乗り越えようとするのは危険です。
乗っているご本人にとっても恐怖心を与えてしまいます。
また、無理に段差を越えた時の衝撃は、車椅子に乗っている方のお尻や腰に響き、痛みや不快感の原因にもなります。
お互いが安心して移動するためには、気合いや腕力で乗り切るのではなく、「スロープを置いて物理的に段差をなくす」という、安全で確実な環境づくりが大切です。
置くだけ!段差スロープ選び3つの基準
段差スロープには種類があって、どれを選べばいいか迷ってしまいますよね。
置き型の段差スロープは、大掛かりな工事が不要で、段差や敷居の前に置くだけでバリアフリー環境が作れる便利なアイテムです。
しかし、適当に選んでしまうと「ドアが閉まらなくなった」「滑って危険」といった失敗につながることもあります。
ここでは、失敗しないための「3つの基準」をご紹介します。
①段差スロープの高さで迷ったら「少し低め」を選ぶ
段差スロープを選ぶ際、重要になるのが「高さ」です。
定規等を使って、解消したい段差の高さをミリ単位で測りましょう。
余白がない定規やメジャーを使って計測すると誤差なく計測ができます。
段差スロープのサイズ(高さ)選びの注意したいのが、「迷ったら少し低めのサイズを選ぶ」ということです。
室内のドアの敷居に設置する場合、段差よりスロープの方が1ミリでも高いと、スロープが引っかかってドアが閉まらなくなってしまいます。
これが段差スロープ選びで多い失敗です。
市販のスロープにぴったりの高さがない場合は、例えば3.2cmの段差なら「3.0cm」のスロープを選ぶなど、あえて数ミリ低いものを選ぶと失敗が少ないです。
数ミリの段差が残ったとしても、車椅子の前輪(キャスター)は引っかかることは、ほぼないでしょう。
②素材:室内は「硬質ゴム・EVA・木製」、屋外は「ゴム・アルミ」
設置する場所(室内か屋外か)によって、適した素材が変わります。
家の中で使う場合、主に3つの素材から選びます。
硬質ゴム製(室内用)
適度な重みがあるのが特徴です。
両面テープで床に固定しなくても、置くだけでずれにくいため、床を汚したくない賃貸住宅や、スロープが動くのが不安な方に最適です。
また、靴下で歩いても滑りにくい安心感があります。
EVA(発泡素材)
軽くて扱いやすく、足に当たってしまっても痛くない素材です。
安価なので、導入しやすい。
カッターで簡単に幅をカットできるため、柱の形やドア枠に合わせて自分で微調整したい方におすすめです。
両面テープやビスで固定する必要があります。
木製
フローリングの木目と相性が良く、インテリアに自然に馴染むのがメリットです。
両面テープやビスで固定する必要があります。
玄関先の縁石や掃き出し窓など、雨風にさらされる屋外では、使い勝手に合わせて2つの素材から選びます。
硬質ゴム製(屋外用)
紫外線に強く、表面に強力な滑り止め加工が施されています。
ズッシリと重いため、一度設置すれば車椅子が乗ってもズレにくく、「常時設置したい」という場合に最適です。
アルミ製(持ち運び・収納向け)
短いサイズのアルミ製スロープは、軽いのがメリットです。
「雨ざらしで置きっぱなしにするのは防犯上不安」
「使う時だけ出して、普段はしまっておきたい」という方にはアルミ製が便利です。
少し高めの段差にも対応しやすい特徴があります。
FRP・カーボン製(持ち運び・軽さ重視)
アルミ製よりもさらに軽く、強度も抜群なのがFRP(繊維強化プラスチック)製です。
女性や高齢の介助者でも片手で楽に持ち運べるため、毎日の出し入れの負担を極限まで減らしたい方に最適です。
価格はアルミより上がりますが、毎日の腰への負担を考えると価値のある選択肢です。
▼アルミ製やFRP製の持ち運びスロープの詳細については、以下の記事をご参照ください
③段差スロープの角度:基本14度、力が弱い方は10度
室内の敷居や屋外の縁石に置く小さな段差スロープは、製品の高さに合わせてメーカー側で安全な「傾斜角度」がすでに設計されているため、自分で長さを計算する必要はありません。
一般的に、限られたスペースでも部屋の邪魔にならないよう、標準的な勾配は「14度」前後に設定されているものが主流です。
しかし、ご自身で車椅子を漕ぐ(自走する)方や、介助するご家族の力が弱い場合、この14度でも「登るのに力が必要」「下る時に車椅子が勢いづいて怖い」と感じる場合もあります。
そんな時は、傾斜角度がより緩やかな「10度設定」の『ダイヤスロープ10』シリーズ、屋外は14設定のダイヤスロープN屋外用を選ぶのがおすすめです。
10度設定のモデルは、勾配が緩やかになる分スロープの「奥行き」が長くなり、手前に少し広いスペースが必要になりますが、その分だけ少ない力で安全かつスムーズに段差を越えることができます。
ご自身の腕力や介助者の体力、そして設置するスペースの広さに合わせて、基本の14度にするか、緩やかな10度にするかを選択しましょう。
▼「スロープの勾配」について詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください
【室内┃ゴム製】段差スロープおすすめ製品
ダイヤスロープ (DS76) ┃シンエイテクノ
特徴
・表面のダイヤカット形状による高いすべり止め効果
・横方向からの歩行者にも配慮した安全なバリアフリー設計
・耐摩耗性に優れた抜群の強さを持つ硬質ゴム素材
・歩行者や車イスの出入りに安心な基本14度の角度設計
重量:0.12kg〜8.6kg(高さにより異なる)
サイズ
幅:76cm
有効幅:62cm〜73cm(高さにより異なる)
勾配度数:7°〜18.5°(高さにより異なる)
素材:ゴム
カラー:ブラウン
間口が広い場所には幅100cmタイプもあります。
ダイヤスロープ 10 (DS10-80シリーズ) ┃ シンエイテクノ
特徴
・歩行や車イスでの上り下りが楽になる10度の勾配設計
・つまづきにくく角からの乗り入れも楽な両サイドR形状
・すべり止め効果を高めるやや大きめの表面ダイヤカット意匠
・抜群の耐摩耗性と耐荷重200kgを誇る安心の硬質ゴム製
重量:0.15kg〜5.0kg
サイズ
幅:80cm
有効幅:60cm
勾配度数:10°
素材:ゴム
カラー:ブラウン
ダイヤスロープライン(DS76L) ┃シンエイテクノ
特徴
・スロープの位置をすばやく確認できる目立ちやすいイエローライン付き
・実証実験でも確認された、薄暗い場所でも見えやすい安心設計
・設置場所に合わせて選べる、高さ10〜30mm(5種類)のバリエーション
・車いすなどの移動でも安心な、耐荷重200kgの頑丈な造り
重量:0.23kg〜1.3kg(230g〜1,300g)
サイズ
幅:76cm
有効幅:65cm〜73cm
勾配度数:14°
素材:ゴム
カラー:ブラウン
インタースロープ┃モルテン
特徴
・小さな段差による歩行時のつまずきや車いす走行時の負担を軽減する低段差設計
・ずれにくく、置くだけで安全に使用できる特殊なエラストマー素材
・靴下や靴で歩いても滑りにくい安心の表面形状
・屋外から屋内まで広範囲に設置できる高い耐久性
重量:0.10kg~5.50kg(サイズにより異なります)
サイズ
幅:76cm、111cm
勾配度数:14°
素材:エラストマー
【室内┃EVA・発泡素材】段差スロープおすすめ製品
タッチスロープ(TS68・TS80・TS100) ┃シンエイテクノ
特徴
・軽くて施工しやすく、耐摩耗性に優れた発泡EVA製
・すべり止め効果を高める表面の溝加工(高さ0.5、1.0、1.5cmを除く)
・カッターナイフで切断し、設置場所に合わせて可能な長さ調整
・横からの歩行でもつまづきにくい両端バリアフリー設計(TS68は除く)
サイズ
幅:68cm、80cm、100cm
有効幅:60〜78cm(TS80)、80〜98cm(TS100)
勾配度数:基本14°(高さにより3°、7.5°、15°、16°)
素材:発泡EVA製 カラー:ライトブラウン
段差越えに負担がかからない、緩やかな勾配(10度)の『タッチスロープ10』もあります
安寿 段差スロープEVA(幅76cmタイプ)┃アロン化成
特徴
・部屋の開口部にピッタリと合わせやすい幅76cmのサイズ設定
・横からの歩行でも足が引っかかりにくい、側面からのつまづきを防ぐ端末形状
・設置場所に合わせてカッターナイフで手軽にできる幅や高さのカット調整
・付属のライナーを使用して2mm単位で行える細かな高さの微調整
重量:約0.2kg〜約0.73kg(高さのサイズにより異なります)
サイズ
幅:76cm
素材:EVA
カラー:ライトブラウン
【室内┃木製】段差スロープおすすめ製品
木製段差解消スロープ ┃マツ六
特徴
・天然木集成材を使用した高級仕上げ
・滑り止めとして機能する表面の溝付き加工
・段差3mmに設定された先端部のバリアフリー仕様
サイズ
幅:80cm(800mm)
勾配度数:約14°
素材:天然木集成材
カラー:ミディアムオーク、クリア、Mブラウン
木製ミニスロープ ┃トマト
特徴
・住居内の段差を解消する、車いすの移動やつまずき防止設計
・走行部傾斜17度に設定された、上り下りしやすいゆるやかな勾配
・安全性を高める、ビス穴とすべり止め加工が施された溝付きの走行面
サイズ
幅:140cm
勾配度数:17°
素材:ナラ材(ウレタン塗装)
屋内用スロープ 段ない・ス┃シコク
特徴
・屋内のあらゆる段差にぴったり適応する高さ調整レールの段階調整機能
・歩行を安全にし、車いすなどの移動も楽に行えるゆるやかな勾配設計
・傾斜部分の隆起と樹脂塗装(木製タイプのみ)による、すべり止めW効果と高い耐久性 ・居住空間になじむ木目調・天然木のシンプルなデザイン
重量:約0.5kg~約2.7kg(サイズにより異なります)
サイズ
幅:80cm、90cm
素材:天然木、ABS樹脂、アルミ(高さ調整レール)
【屋外・縁石┃】段差スロープおすすめ製品
ダイヤスロープ 屋外用 (DS076)┃シンエイテクノ
特徴
・太陽光や自然環境に強いハイパロン(CSM)素材で、変色の軽減
・玄関などの段差に合わせて置くだけで、屋外での手軽な段差解消
・ゴムのすべり止め効果による、ズレや簡単な移動の防止
・歩く人や、車イスを押してもらって出入りする人にも安心な角度設計
・0.5〜10.0cmまでの豊富な品揃え
重量:0.12〜8.6kg
サイズ
幅:76cm
有効幅:62〜73cm
勾配度数:7〜18.5°
素材:ゴム・ハイパロン (CSM)
カラー:モスグリーン
緩やかな勾配14度への改良されたNシリーズもあります。
(5.5・6.0・6.5cm、7.5・8.0・8.5cmのみ)
ダイヤスロープ FRP(DSF70)┃シンエイテクノ
特徴
・ガラス繊維強化プラスチック(FRP)の一体成形による、軽さと強度、耐久性の両立
・屋内外兼用で使用可能
・高齢者や女性でも簡単に設置・撤去ができる、持ち運びに便利な軽量設計
・表面に採用された、滑り止め効果の高いゴム製ダイヤカット形状
・左右2箇所のアジャスターによる、凹凸のある接地面での水平調整機能
・移動の際に重宝する、本体左右に設けられた取っ手付
重量:3.0kg~7.0kg(高さのサイズにより異なります)
サイズ
幅:70cm
勾配度数:14°
素材:本体・ガラス繊維強化プラスチック/走行面・ゴム(EPDM)/アジャスター・ステンレス
カラー:グレー
安全に使うための設置のコツと介助方法
段差スロープを用意しても、設置方法や介助の仕方を間違えると事故につながる恐れがあります。ここでは、安全に使い続けるための重要なポイントをご紹介します。
室内スロープのズレを防止する対策
スロープを安全に使うためには、車椅子が乗った時に動かないよう「ズレ防止対策」を行うことが重要です。
- 【ゴム製】→適度な重みと滑りにくさで「置くだけ」
シンエイテクノの『ダイヤスロープ』などのゴム製は、素材自体の重みと吸着力により、テープやネジなしでもずれにくい。
賃貸住宅などにおすすめ。 - 【EVA・発泡素材】→付属のネジや両面テープで固定する必要あり
材質が軽量なため、そのままではズレてしまいます。
アロン化成の『段差スロープEVA』のように、最初から固定用のネジが付属している製品を選ぶと、部品を買いに行く手間が省けて便利です。 - 【木製】→両面テープや、あらかじめ開いているビス穴でねじ止め
木製もズレ防止の固定が必須です。
市販の強力両面テープを使うか、トマトの『木製ミニスロープ』のように、あらかじめ床固定用の穴(ビス穴)が用意されている製品を選ぶと設置がスムーズです。
「賃貸住宅で床にテープの跡や穴を残したくない」
「固定作業が面倒」という方は、ゴム製を選ぶのが手間いらずなズレ防止対策になります。
軽量なEVA製や木製スロープを選ぶ場合は、付属のネジや市販の両面テープを使って、床にしっかりと固定してから使用しましょう。
段差スロープでの車椅子介助注意点
車椅子でスロープを通る際にも、安全のため以下のポイントに注意しましょう。
【上る時のポイント:必ず真正面から】
スロープを上る時は、必ずスロープに対して車椅子が真っ直ぐ正面を向くようにアプローチしてください。
斜めから進入すると、片方のタイヤがスロープから落ちて転倒する危険があります。
また、助走をつけて勢いよく上るのではなく、スロープの手前で一度止まり、ゆっくりと一定のペースで押し上げるようにしましょう。
【下る時のポイント:後ろ向きで】
段差を下る時は、「後ろ向き」で下りるのが鉄則です。
特に段差が高い場合は、前向きのまま下ってしまうと、危険です。
車椅子の座面が前に傾き、乗っているご本人が前方に滑り落ちてしまう恐れがあります。
下る際は、介助者が先に後ろに下がり、後方の安全(障害物がないか等)を確認しながら、車椅子の後輪(大きいタイヤ)からゆっくりと下ろします。
最後に前輪(小さなキャスター)を床に着地させるようにしてください。
上りは「前向き」、下りは「後ろ向き」というルールで、転倒や転落のリスクは減らすことができます。
お互いが安心して移動できるよう、ぜひ日々の介助に取り入れてみてください。
まとめ
「たった数センチ」の段差でも、毎日の車椅子移動となると介助者の負担が増え、乗っている方の不安にもつながります。
無理に乗り越えようとせず、環境に合ったスロープを置くことが、在宅介護を安全にする近道です。
- 段差の高さに対してサイズで迷ったら「数ミリ低め」を選んでドアの干渉を防ぐ
- 賃貸や固定が面倒なら、置くだけでズレにくい「ゴム製」
- 自走する方や力が弱い介助者には、より緩やかな「10度設定の製品」がおすすめ
ダイヤスロープ 10やタッチスロープ10
賃貸住宅や設置の準備に不安がある方には、シンエイテクノの「ダイヤスロープ」のような、置くだけで滑りにくい硬質ゴム製が多く選ばれています。
「どのサイズが自宅のドアに合うか不安…」という方は、まずは設置したい場所の高さを測ることから始めてみてください。
段差スロープは、大がかりな工事は不要です。
置くだけで、車椅子の引っかかりや介助負担が軽減されることが期待できます。
まずは一箇所から検討してみませんか。
この記事が、ご家族の負担を減らすきっかけになれば幸いです。
2015年に福祉用具専門相談員の資格を取得。北海道を拠点に10年以上、現場での選定・適合に携わっています。
介護用品は「高機能=正解」ではありません。「使う人の身体や環境に合うか」を最重視しています。
当ブログでは、メリットだけでなく「こういう人には合わない」という注意点も発信しています。後悔しない用具選びをお手伝いします。
保有資格: 福祉用具専門相談員 / 福祉住環境コーディネーター2級
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