はじめに
「とりあえず分厚いクッションを敷けばお尻は痛くないよね?」
「ウレタンやエアーなど種類が多すぎて、どれを選べばいいか分からない」とお悩みではありませんか?
車椅子クッションで、「厚くて柔らかい=良い」という考えは誤った選定につながることがあります。
ご自身の身体や車椅子に合わないクッションを選ぶと、足こぎができなくなったり、姿勢が崩れて逆に疲労や痛みを悪化させる原因になってしまいます。
この記事では、福祉用具専門相談員として日々介護の現場と向き合っている著者が、失敗しない選び方をご紹介します。
- 失敗しない3つの選び方(サイズ・材質・硬さや形状)
- 生活シーン(足こぎ・尿漏れ・外出など)に合わせた選び方のコツ
- 材質別のおすすめ厳選製品
車椅子クッション選びは「生活シーン」に合わせること
車椅子のクッション選びと聞くと、「褥瘡(床ずれ)予防」を一番に思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん褥瘡予防はとても重要ですが、実はそれだけではありません。
クッションは、長時間座っている時の「日々の疲労」や、生活動作における「利便性」を左右するアイテムです。
車いす利用者一人ひとりの「生活シーン」に合わせて選ぶことで、毎日の快適さが変わります。
※すでに褥瘡や前ズレでお悩みの方は、以下の別記事をご参照ください
足こぎ用:しっかり床に届く「薄型」
足こぎで車椅子を操作する方にとって、重要なのは足がしっかりと床に届くことです。
クッションに厚みがあると、その分だけ座面(前座高)が高くなってしまいます。
座面が数センチ上がるだけで足の裏全体が床に接地しなくなり、足こぎの動作が難しくなってしまうのです。
厚みのあるクッションは一見座り心地が良さそうに見えますが、「自分の足で移動したい」というご本人の思いを奪ってしまうことにつながるかもしれません。
足こぎをされる場合は、姿勢を安定させつつも高さを変えすぎない「薄型」を優先して選ぶことがおすすめです。
尿漏れ対策:手入れが楽な「防水・丸洗い素材」
尿漏れ(失禁)の不安がある場合は、「防水加工」や「丸洗いできる素材」のクッションを推奨します。
通常のウレタン素材などは、一度水分が染み込むと奥まで汚れが到達し、臭いが取れなくなってしまいます。
本体への臭いや汚れ移りを防ぐためにも、水分を弾くクッションは不可欠です。
拭き取れる防水カバーやシャワーで丸洗いできる素材を選ぶことで、ご家族の洗濯の手間を大幅に減らせます。
また、「汚してしまったらどうしよう」というご本人の気持ちも和らぎ、お互いが気持ちよく過ごせるようになります。
外出・車載用:持ち運びやすい「軽量タイプ」
週末のお買い物や通院など、車椅子を車に積んで頻繁に外出する方には、「軽量タイプ」のウレタン素材などが適しています。
座り心地や体圧分散に優れた「ゲル(ジェル)素材」のクッションもありますが、これらは重量があります。
車椅子を積み下ろす際、重いクッションのせいで、外出が面倒に感じてしまうケースもあります。
介助の負担を減らし、気軽にお出かけを楽しむためには、持ち運びの邪魔にならない軽さと扱いやすさを重視して選ぶこともポイントの1つです。
「厚いクッション=良い」という考えは要注意
車椅子のクッションを選ぶ際、「厚みがあるほど、お尻が痛くならなくて良い」と思っていませんでしょうか?
クッションの厚みは、単なる座り心地だけでなく、車椅子での姿勢や生活動作そのものに直結します。
厚手のクッションが、かえって日々の生活の妨げになるケースもあります。
ここでは、車椅子に厚手のクッションを敷くことによって、発生する失敗事例をご紹介します。
失敗①:座面が高くなり「足こぎ」ができなくなる
厚みのあるクッションを敷くと、その分だけ車椅子の座面(前座高)が高くなります。
足こぎでスムーズに移動するためには、足の裏全体がしっかりと床についている必要があります。しかし、座面が数センチ上がるだけでかかとが浮いてしまい、床を蹴る力が逃げてしまいます。
クッションを厚手のタイプに変更したことにより、「今まで自力で動けていたのに、足こぎができなくなった」という失敗につながることがあります。
失敗②:ひじ掛けが相対的に低くなり「姿勢が崩れる」
座面に厚いクッションを敷くと、相対的にひじ掛け(アームサポート)の位置が低くなってしまいます。
ひじ掛けが低くなると、腕をしっかり乗せられなくなり、上半身を支えが不安定になることがあります。
その結果、体が左右に傾いたり、前に倒れやすくなったりと、姿勢の崩れを引き起こします。
お尻の痛みを防ぐつもりが、姿勢の悪化招く原因になるため、クッションの厚みとひじ掛けの高さバランスにも注意しましょう。
車椅子用クッション3つの選び方
車椅子用クッションの選び方①~サイズ~
体型と使用する車椅子に合ったサイズを選びましょう。
車椅子クッションのサイズが合わなければ、座り心地はもちろんのこと、姿勢保持や車椅子からの立ち座りにも支障をきたし、最悪な場合、褥瘡の原因になることもあります。
車椅子クッションは、ご本人の体型と使用する車椅子にに合う“高さ(厚さ)”、”幅”、”奥行”のサイズを選びましょう。
車椅子の座高は、“車椅子の座高+クッション高”になるため、その分
車椅子の座高は適正な高さにしないと、立ち座りし難かったり、姿勢の悪化につながります。
使用する車椅子とクッションの幅や奥行が合わないと座り心地や姿勢に影響します。
車椅子の座面幅と座奥行に適合するように、寸法をよく確認しておきましょう。
車椅子クッションの選び方②~材質~
車椅子クッションの材質は、主にウレタン素材、ラテックス素材、ジェル(ゲル)素材、空気圧構造(エアー)の4種類があります。
材質によって、”除圧性能”、”姿勢保持”、’立ち座りのしやすさ”、”座り心地”等の特徴が異なります。
ウレタン素材
ウレタン素材は、最も一般的で、安価に手に入ります。
ウレタン素材の中には、体圧分散に優れる低反発素材や安定性に優れる硬質素材など用途に応じて様々な材質があり、比較的軽量なので、扱いやすいです。
空気圧構造(エアー)素材
クッション内部で空気が移動することにより、高い耐圧分散効果を生み出します。
褥瘡リスクのある方に使用されていることが多い素材です。
適切な空気圧にしないと底づき等が発生してしまいますので、製品によっては、定期的な空気圧管理が必要です。
車椅子クッションの選び方③~硬さや形状
クッションの「硬さ」と「形状」は、車椅子で長く快適に、そして安全に過ごすためのポイントです。
柔らかすぎると姿勢が崩れる原因になることがあります。
「柔らかい=お尻に優しい」と思われがちですが、柔らかすぎるとお尻が深く沈み込み、骨盤が後ろに倒れて姿勢が崩れやすくなることがあります。
また、体が沈み込むことで、立ち上がったり乗り移ったりする際の動作が難しくなることもあります。
- 硬め(沈み込みが少ない): ベッドやトイレへの移乗を頻繁に行う方や、安定した姿勢でお食事や趣味の時間、テレビ鑑賞などを楽しみたい方に適しています。
- 柔らかめ: 体重が軽く、痩せて骨が出っ張っていることで痛みを強く感じる方に向いています。
車椅子クッションの形状は、主に「フラット型」と「立体(3D)」の2タイプがあります。
- フラット型(平らな形)
座面が平らなタイプ。
車椅子の上でお尻の位置をずらしたり、姿勢を変えたりしやすいのが特徴で、ご自身の力で比較的活発に動ける方に適しています。 - 立体(3D)形状
お尻や太ももの丸みに合わせて、クッションに凹凸がついているタイプ。
お尻をすっぽりと包み込んで骨盤を支えるため、体が左右に傾きやすい方や、前へのズリ落ちを防ぎたい方におすすめです。
ご自身の身体の状態や、車椅子の上でどのように過ごすことが多いかをイメージしながら、用途に合ったものを選んでみてください。
【ウレタン素材】車椅子クッションおすすめ製品
日進医療器 ┃ MuAtsuクッション NX2
ムアツの褥瘡予防のテクノロジーを応用し、折りたたみ機能を付加した新開発のクッション。
体圧を分散し、血流を妨げにくく長時間の利用でも快適にご使用いただけます。
無膜ウレタンを使用し、通気性に優れており、ムレにくい構造です。
後方のアーチ形状が座奥までしっかりと支持し、様々な車いすに対応しています。
タカノ ┃ タカノクッションMOLA
アウターカバー、インナーカバー、ラテックス層、モールドウレタン層の4層構造になっている車いす用クッションです。
坐骨部の厚みが5cmで、体圧分散性と座位保持性が高い”コンタータイプ”と坐骨部の厚みが5.5cmで汎用性が高くしっかり座れる”フラットタイプ”の2タイプをラインナップ。
クッションサイズは、座幅380mm、400mm、430mmとなっていますので、車いすに合った幅を選びましょう。
仙骨座り等が原因で、坐骨や尾骨に負担がかかっている方、座っている時に姿勢が崩れやすい方におすすめのクッションです。
耐久性の高いモールドウレタンを使用し、インナーカバーが防水で、汚染に対応しているので、長く使えそうなクッションです。
タカノ ┃ タカノクッションR

特殊ウレタンフォームの多層多面構造により体圧分散性が高く、仕様ニーズに応じて様々な形状のバリエーションがある製品です。

ケープ ┃ マイクッション

2層構造のウレタンフォームが体圧分散と安定保持を両立させます。また、バックアップ構造により、スリングシートのたわみを吸収します。


【ラテックス素材】車椅子クッションおすすめ製品
グローバル産業 ┃ Motenasu 京おざぶ(和)

和柄の落ち着いたデザインの100%天然ラテックス素材クッションです。柔らかく弾力性があり、暑い季節でもムレなく使用できます。
【ジェル(ゲル)素材】車椅子クッションおすすめ製品
加地 ┃ アウルケアシリーズ
ジェルとウレタンのハイブリット構造で、体圧分散と安定性を両立させたクッションです。
エクスジェルを使用したアウルケアクッションは、坐骨部を包み込むようにサポートし、底つき感を感じさせない快適な座り心地が特長です。
エクスジェルは、”弾力性”、”柔軟性”、”流動性”に優れ、座る時に坐骨部分に起きる”衝撃”、”圧力”、”ズレ”の問題を解決します。これにより長時間の座位保持をサポートします。
また、仙骨が当たりにくいようにスリットが入っているのが特徴です。このスリットにより仙骨部の床ずれリスクを軽減することにつながります。
身体にフィットするストレッチ素材や、誤使用を防ぐ分かりやすいデザインも魅力。
滑り止め加工や防水・難燃カバー付きで、介護現場でも安心して使えます。
車いすに置くだけのシンプル設計も好評です。
体型や状態に合わせて、クッションの厚さ、形状にバリエーションがあります。
クッションの厚さは、床ずれリスクや体型に合わせて、主に3種類。
さらに形状は、座位保持の度合いによって、フラット形状と3D形状、前ズレ防止のアンカー形状の3種類があります。
フラットタイプは、数字の後にFが付く製品。(例:アウルケア40F)
3D形状とアンカー形状は、数字の後にCが付く製品です。(例:アウルケア80C)
数字はクッションの厚みを表しています。
日本ジェル ┃ ピタシートクッションシリーズ

ジェル素材の格子状クッションにより、”高い体圧分散”、”ムレ防止”、”高い耐久性”があるので、快適に使用することができます。また、ご本人に応じて厚さを3種類(35mm、55mm、70mm)の中から選ぶことができます。
中身のジェル部分は水洗することができるので、清潔に保てます。
ピタシートクッションは、カバーの材質や形状によりいくつかバリエーションが用意されています。
ピタ・シートクッションMk2
ピタ・シートクッション55の使いやすさをそのままに、洗いやすさや使用時の快適性が向上。
中材、カバーすべてご家庭での洗濯が可能です。
クッション材は、立体格子状ジェル+プロファイル加工高通気性ウレタンを使用しており、体圧分散製、通気性に優れ、水洗いできるのが特徴です。
アクションジャパン ┃ アクションパッド

ベーシックタイプはわずか2.5cmの厚さで、やわらかいのに底づきせず、高い体圧分散があるクッションです。ジェルがフィルムで包まれているので、失禁などがあっても手入れしやすい製品です。
ケープ ┃ デュオジェルクッション

大腿部のシリコンジェル、後側の流動ジェルとウレタンフォームにより、体圧分散と安定性を両立させたクッションです。左右の大腿部の裏側で体重を受けるU字構造により、坐骨結節に集中する圧力を分散します。

タイカ ┃ アルファプラクッション

床ずれ防止用マットレスで評価の高いアルファプラ素材を使用したクッションです。
3層のゲルサンド構造により、体圧分散性と安定性があり、前ずれを防ぐ構造のクッションです。

【空気圧構造(エアー)】車椅子クッションおすすめ製品
アビリティーズ・ケアネット ┃ ロホクッション

独立したエアセルが臀部を優しく包み、優れた体圧分散により褥瘡予防に定評のあるクッションです。
エアセルの高さはロー(5cm)、ミドル(8.3cm)、ハイ(10cm)の3種類があり、床ずれリスクに応じて選択が可能です。
体幹保持が難しい方には、クァドトロセレクトがおすすめです。
定期的な空気圧調整が必要なので、使用するには自己管理もしくは、管理できる環境でしようするようにしましょう。
モルテン ┃ パワークッション

充電式のバッテリー駆動により、エアセルの硬さ調整や除圧を行うクッションです。
座った状態で圧切り替えを行う秀逸した機能も備えた製品です。

空気調整を自動で行うので、ポンプやバルブから空気圧を調整することが難しい方におすすめです。
バッテリー駆動のため、充電の必要があります。
連続約50時間(クッション上での動きが少ない場合)
連続約15時間(クッション上での動きが多い場合)
ユーキ・トレーディング ┃ バリライト ストレータス

ストレータスは、エアーとウレタンのハイブリッド構造になっており、除圧と安定性を兼ね備えたクッションです。
バルブから圧力調整ができ、体型や座り心地に合わせて最適除圧、快適座位に調整が可能です。
ユーキ・トレーディング ┃ バリライト メリディアン

メリディアンは、エアーとウレタンのハイブリッド構造で、前後で独立した空気室により、バリライトシリーズの中で高い除圧性と前ずれしにくい製品です。

床ずれリスクが高く、前ずれの心配がある方におすすめです。
ミキ ┃ エアールクッション

バルブから空気圧調整が可能なクッションです。ストレータスと同じ仕組みですが、本製品のほうが安価です。クッションの厚さが35mmと80mmの2種類があります。
車いすクッション 売れ筋ランキング
まとめ:生活シーンに最適なクッションで快適な毎日を
車椅子のクッション選びは、褥瘡(床ずれ)予防だけが目的ではありません。
足こぎのしやすさや介助の負担軽減など、ご本人の「生活シーン」に合わせることが毎日の快適さを左右します。
- 厚さや柔らかさの思い込みに注意:「厚い=良い」ではありません。姿勢の崩れや動作の妨げにならない硬さとサイズを選ぶことが重要です。
- 目的に合わせた材質選び:お手入れ重視なら防水・ジェル素材、軽さや扱いやすさ重視ならウレタン素材など、用途に合わせて選択してください。
身体に合わないクッションを使い続けると、痛みや姿勢悪化の原因につながります。
ご本人とご家族の負担を減らすためにも、まずは「今一番解決したいお悩み(痛み、前ズレ、尿漏れなど)」を明確にしてみましょう。
ぜひ、この記事で紹介したおすすめ製品の中から、現在の状況にぴったりなクッションを見つけていただけますと幸いです。
2015年に福祉用具専門相談員の資格を取得。北海道を拠点に10年以上、現場での選定・適合に携わっています。
介護用品は「高機能=正解」ではありません。「使う人の身体や環境に合うか」を最重視しています。
当ブログでは、メリットだけでなく「こういう人には合わない」という注意点も発信しています。後悔しない用具選びをお手伝いします。
保有資格: 福祉用具専門相談員 / 福祉住環境コーディネーター2級
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