はじめに
「初めての車椅子選び、自走式と介助式の違いもよく分からないし、どれを選べばいいの?」と迷っていませんか?
車椅子は、ご本人の「安全な移動」を守り、ご家族の「介護負担」を軽くするためにあります。
今回ご紹介する「介助式の標準タイプ」は、タイヤが小さく軽量なため、通院や外出のサポートに最適なタイプです。
このタイプ選びで最も重要なのは「軽さ」と「タイヤ」です。
ここを軽視して選んでしまうと、後になって以下のような失敗につながりかねません。
車椅子導入後の後悔例
- 「思ったより重くて、車のトランクに持ち上げるのが大変(腰を痛めてしまった)」
- 「タイヤが小さすぎて、段差のたびにガックンと衝撃がくる」
- 「空気入れが面倒で、いざという時にパンクしていた」
この記事では、10年以上の現場経験を持つ福祉用具専門相談員が、「介助式・標準タイプ」の選び方と、厳選したおすすめの5機種をご紹介します。
この記事を読むことで、カタログのスペックだけでは分からない「現場の評価」が分かりるだけでなく、ご家族に合う「一台」が見つかるヒントになりますと幸いです。
なお、「そもそも標準タイプが合っているか不安(姿勢が崩れるかも?)」という方は、先にこちらの【完全保存版】車椅子の選び方ガイドを参考にしてみてください。
それでは、まずは基本となる「標準タイプ」の特徴から見ていきましょう。
「介助式の標準タイプ」とは?
誰かに押してもらう前提の、軽量・コンパクトな車椅子
標準タイプとは、「余計な機能を省いた、最もシンプルで頑丈な車椅子」です。
の標準タイプは、「構造がシンプルだからこそ壊れにくく、誰にでも扱いやすい」というメリットがあるため、多くの病院や施設で選ばれています。
介助式とは、「ご自身で車椅子を操作せず、介助者に押してもらうことを前提とした、シンプルで軽い車椅子」です。後ろのタイヤが小さく、ハンドリム(手でこぐための輪っか)が付いていないことです。
要するに、介助式標準タイプとは、車椅子の中で最も軽量コンパクトなタイプです。
- 小さなタイヤ(16インチ前後): 自走式(22インチ)に比べてタイヤが小さいため、小回りが利き、狭い廊下や室内でも動きやすいのが特徴です。
- 軽量・コンパクト: 余分なパーツがないため、一般的な重さは「9kg〜12kg」程度。女性や高齢の介助者でも扱いやすい重さです。
- 手元ブレーキ(介助ブレーキ)標準装備: 押す人が操作しやすいよう、ハンドル部分にブレーキが付いています。
- 折りたたみが可能: 背もたれをパタンと折り、コンパクトになるため、軽自動車のトランクにも積み込みやすいサイズになります。
- パーツが固定されている: 肘掛けや足置きがフレームに固定されており、外したり動かしたりできません。その分、故障が少なく丈夫です。
「機能が少ない」と聞くとデメリットのように感じるかもしれません。
メインの使用用途が「通院の送り迎え」や「ちょっとした散歩」であれば、高機能で重たい車椅子よりも標準タイプの方が、ご家族の負担は圧倒的に軽くなります。
移乗動作が大変なら多機能タイプの方がおすすめ
標準タイプを選ぶ前に、必ず比較しておきたいのが「多機能タイプ」との違いです。
「ベッドやトイレへの乗り移り(移乗)が楽かどうか」という点が大きな違いになります。
標準タイプの車椅子は「肘掛け」と「足置き」が固定されており、動かすことができません。
そのため、乗り降りする際は「一度立ち上がって、体の向きを変えて座り直す」という動作が必要になります。
一方で、多機能タイプには、この動作を楽にする2つの機能があります。
- 肘掛けが跳ね上がる(アームサポート跳ね上げ): 肘掛を跳ね上げると、横の障害物がなくなります。ベッドから横へ滑るように乗り移ることが可能になります。

- 足置きが開く・外れる(スイングアウト): 足置きを外側に開くことができます。足元が広くなり、車椅子をベッドや便器にギリギリまで近づけることができます。

ご本人が「つかまり立ちが難しい」状態であれば、固定式の標準タイプだと介助者の抱え上げ負担が大きくなります。
「抱きかかえての介助が必要」な場合は、迷わず多機能タイプを検討してください。
標準タイプが向いている人・向かない人
標準タイプが向いている人
ここでは、介助式標準タイプが向いている人・向かない人の判断基準をリストにまとめました。
ご家族の状況と照らし合わせてチェックしてみてください。
以下の3つの条件に当てはまる方であれば、標準タイプが扱いやすい選択になると思います。
- ご自身で立ち座りが可能である: 乗り降りの際、手すりを持って一度立ち上がれる方。
- 主な用途が「外出・通院」用である: 車への積み込み頻度が高く、長時間座りっぱなしではない方。
- 小柄な方や、廊下が狭い家屋での使用: 全幅が狭いため、自走式では通れないドア幅も通れる場合があります。
標準タイプは要注意な人(失敗例)
一方で、以下のような悩みや身体状況がある場合は、標準タイプを選んでしまうと「使いにくい」「座っているのがつらい」と後悔する可能性が高いため、注意が必要です。
- ベッドから「抱え上げ」で移乗している
ご自身で足を踏ん張って立つのが難しい場合、肘掛けが固定されている標準タイプは、介助者の腰への負担が限界に達します。肘掛けが跳ね上がる「多機能タイプ」を選びましょう。 - 長時間座ると姿勢が崩れる(ずっこけ座り)
標準タイプの座面(ハンモック構造)は体を支える力が弱いです。長時間座ると体が傾いたり、お尻が前へ滑り出してしまう場合は、車椅子用クッションを使ったり、背張り調整ができるタイプの車椅子などがおすすめです。

失敗しない介助式標準タイプ車椅子の選び方
ここからは、実際に「介助式標準タイプの車椅子」を選ぶ際に、チェックしていただきたいポイントをご紹介します。
1. 「軽量・コンパクト」で選ぶ

介助式を選ぶ最大のメリットは「軽さ」です。
通院などで車への積み下ろしをする場合、1kgの差が介助者の腰への負担を大きく変えます。
- 一般的なスチール製: 約13kg以上(重いです)
- 標準的なアルミ製: 約11kg〜12kg
- 軽量・超軽量モデル: 約9kg〜10kg(おすすめ!)
女性や高齢の方がトランクへ持ち上げるなら、「10kg前後」のモデルをおすすめします。
2. 「タイヤサイズ」と「ノーパンク」

「エアタイヤ」は、クッション性が良く乗り心地が柔らかいのが特徴です。しかし、月に1回程度の空気入れが必要になります。
しかし、空気が抜けた状態で使うと、駐車ブレーキがタイヤに届かず効かなくなるというリスクもあります。
一方で「ノーパンクタイヤ」は、ゴムの中に特殊な樹脂などが詰まっています。そのため、以下のメリットがあります。
- 絶対にパンクしない:
画鋲やガラスを踏んでもパンクしません。 - 空気圧抜けないので、いつでもすぐに使える:
車のトランクに入れっぱなしでも、半年ぶりに倉庫から出しても、空気圧は変わらずそのまま乗ることができます。 - 駐車ブレーキの効きが悪くなる心配がない:
空気が抜けないため、駐車ブレーキの効きが悪くなる心配がなく、安全性が高い。
介助式標準タイプおすすめ5選┃福祉用具専門相談員厳選!
CRT-SG-2┃ミキ
特徴
・女性や力の弱い方でも扱いやすい、重量わずか10.1kgの超軽量スタンダードモデルです。
・全幅49cmのスリムかつコンパクトな設計で、狭い場所での取り回しに優れています。
・工具不要でステップの高さ調整が簡単にできる「ワンプッシュ式ステップ」を採用。
・髪の毛やホコリが絡まりやすいキャスターを簡単に取り外して掃除できる「ワンタッチキャスタ」を装備。
重量:10.1kg
サイズ
全幅:49cm
全長:96cm
座幅:40cm(座シート幅36cm)
前座高:43.5cm
座奥行:38cm
耐荷重:100kg
素材:アルミカラー:紺(A-16)
NEO-2┃日進医療器
特徴
・国内メーカー品でありながら、高品質かつリーズナブルな価格設定が魅力。
・空気補充が不要でメンテナンスが楽なノーパンクタイヤを標準装備。
・軽量・高品質なアルミ製フレームを採用しており、重量は11.9kgと扱いやすい設計。
・背折れ機能が付いているためコンパクトに折りたたむことができ、自動車のトランクなどへの収納に便利。
・制動力の高いバンド式介助ブレーキを搭載しており、坂道などの移動でも安心。
重量:11.9kg
サイズ
全幅:60cm
全長:97cm
座幅:40cm
前座高:43cm
座奥行:40cm
耐荷重:100kg
素材:アルミ
カラー:チェック柄
ネクストコアHB NEXT-21B HB┃松永製作所
特徴
・背フレームを後方に曲げ、左右独立して調整できる「背張り調整」機能により、さまざまな身体状況に対応。
・「立体スリングシート」が体を包み込むように支え、長時間の使用でも疲れにくい設計です 。
・空気補充が不要でメンテナンスが楽な、クッション性の高いノーパンク(ハイブリッド)タイヤを採用しています。(型式にHB表記あるタイプのみ)
・超スリム・コンパクト設計により全幅が狭く、室内や狭い通路での移動もスムーズに行えます 。
重量:11.4kg
サイズ 全幅:54cm
全長:93.5cm
座幅:40cm(オプションで38cm、42cmも選択可)
前座高:43cm
座奥行:38cm
耐荷重:100kg
素材:アルミ
カラー:オレンジ、ブルー、ライトグリーン、グレー
グレイスコア GRC-21B┃松永製作所
特徴
・業界一高い56cmの背もたれと「三角パッド」が背中全体を広く支えるため、姿勢保持や座り心地を重視する方に最適 。
・骨盤の隙間を埋める「臀部サポートベルト」と「背張り調整」により、円背や側弯の方でも体に合わせてしっかりと姿勢を安定させられます 。
・空気管理不要でクッション性の高い「ハイブリッドタイヤ」と、通気性抜群の「イージードライクッション」で快適な座り心地を実現 。
・工具不要で座面奥行を38cmと34cmに切り替えられ、小柄な方でも奥までしっかり座れるため、姿勢が崩れにくい設計 。
重量:13.5kg
サイズ
全幅:56cm
全長:95cm
座幅:40cm
前座高:43cm
座奥行:38cm(34cmに変更可能)
耐荷重:100kg
素材:アルミ
カラー:M-12、M-13、M-14
ふわりす KF16-40SB┃カワムラサイクル
特徴
・カワムラサイクル史上最軽量の介助用モデルで、重量はわずか8.9kgと女性や力の弱い方でも持ち運びが容易 。
・バックサポートを8度後傾させることでシートが背中に沿いやすく、駆動時の腕の動きも邪魔しない設計 。
・かかとのずれ落ちを防ぐヒールループを標準装備しており、フットプレート跳ね上げ時には足が引けるため立ち座りがスムーズ 。
・フットサポートとシート間の距離は2cmピッチで3段階の調節が可能で、体格に合わせて変更可能。
重量:8.9kg
サイズ
全幅:55cm
全長:94cm
座幅:40cm(42cmも選択可)
前座高:43cm
座奥行:40cm
耐荷重:100kg
素材:アルミ
カラー:さんごピンク、すみれパープル、アイスグリーン、あんずイエロー
長時間座るなら「車椅子用クッション」併用がおすすめ
長時間車椅子に座る機会があると、ご本人から「おしりが痛い」という訴えが出ることがあります。
標準的な車椅子の多くは、座面が薄いシート状になっており、基本的にクッションは付属していません。
ご自宅にある「座布団」は、車椅子とサイズが合わず、座面の奥まで腰掛けることができなかったり、姿勢崩れの原因になることがあります。
1日1時間以上座るなら、姿勢保持に役立つ「車椅子専用クッション」の併用がおすすめです。
失敗しない介助式車椅子の選び方まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
介助式標準タイプの車椅子は、ご本人の移動手段であると同時に、支えるご家族の身体的負担を軽くしてくれる用具です。
たくさんの種類を紹介しましたが、もし「どうしても迷ってしまう」という場合は、以下の基準で選んでみてください。
介助式標準タイプ車椅子で迷っている方へ┃この2機種を特にご提案
1. とにかく「軽さ」と「扱いやすさ」を最優先したい方
ミキの『CRT-SG-2』がおすすめ。
10.1kgという軽さは、女性や高齢の介助者様にとって、通院や積み下ろしの負担を最小限にする最強の味方です。
2. 「座り心地」や「姿勢の安定」も重視したい方
背張り調整機能がついた松永製作所の『ネクストコアHB』がおすすめです。
円背の方や、長時間座ると疲れてしまう方でも、体を優しく包み込んでくれます。
記事のまとめ
介助式車椅子は「軽さ」と「ノーパンク」で介護負担軽減
ご家族の通院や外出を支える「介助式・標準タイプ」の車椅子選びについてご紹介しました。
最適な一台を選ぶことは、ご本人の快適さだけでなく、介助する方の腰や体力を守ることにもなります。
最後に、失敗しない選び方のポイントを振り返りましょう。
- 対象者の確認:ご本人は手すりを持って一度立ち上がれますか?
(難しい場合は「多機能タイプ」をご検討ください) - 重さの目安:女性や高齢の方が車へ積み込むなら、「10kg前後」の軽量モデルが圧倒的に楽です。
- タイヤの種類:メンテナンス不要の「ノーパンクタイヤ」なら、いざという時の空気抜けトラブルを防げます。
ぜひ、ご家族の身体状況と生活環境に合った一台を選んで、快適な外出を楽しんでください。
2015年に福祉用具専門相談員の資格を取得。北海道を拠点に10年以上、現場での選定・適合に携わっています。
介護用品は「高機能=正解」ではありません。カタログスペックよりも、「使う人の身体や環境に合うか」を最重視しています。
当ブログでは、メリットだけでなく「こういう人には合わない」という注意点も発信しています。後悔しない用具選びをお手伝いします。
保有資格: 福祉用具専門相談員 / 福祉住環境コーディネーター2級
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X(旧Twitter): https://x.com/fukushiyouguch






