はじめに
病院などでよく見かける一般的な車椅子を使っていて、
「ベッドへ移る時に、外せない肘掛けが邪魔で介助が大変…」
「突き出た足置きが壁やドア枠にぶつかり、トイレや廊下の曲がり角でスムーズに進めない」
とお悩みではありませんか?
体に合わない普通の車椅子を使い続けると、介助者の腰への負担が悪化して共倒れになったり、浅座りによる姿勢の崩れからご本人の体を痛めるリスクがあります。
- 今の車椅子が使いにくいと感じてしまう理由
- 多機能車椅子の選び方(3つの機能)
- 福祉用具専門相談員厳選のおすすめ機種5選
この記事を読めば、介助する方の負担を和らげつつ、ご本人がご自身の力を活かして生活するためのヒントが見つかります。
移乗の負担を減らしたい方や、トイレや廊下の曲がり角をスムーズに進めたいとお考えの方には、『アームサポートの跳ね上げ』と『フットレストのスイングアウト』、『背張り調整』がついた多機能車椅子への変更がおすすめです。
スライディングボードなどを併用すれば、腰への負担をさらに和らげることができます。
さっそく、詳しく見ていきましょう。
今の車椅子が使いにくいと感じてしまう理由
介護現場やご自宅で
「ベッドへ移る時に、外せない肘掛けが邪魔で介助が大変…」
「突き出た足置きが壁やドア枠にぶつかり、トイレや廊下の曲がり角でスムーズに進めない」
「座っているとすぐに疲れてしまう」というご相談をよく受けます。
その原因の多くは、ご本人の身体機能ではなく、使っている車椅子の種類に原因があるかもしれません。
病院や施設でよく見かける一般的な車椅子は「標準型」と呼ばれ、機能が最小限に絞られています。
一見どれも同じに見えますが、この「標準型」を使い続けることが、日々の介護負担を大きくしている可能性があります。
固定式肘掛けが招く「抱きかかえ介護」の腰痛リスク

標準型車椅子は、肘掛け(アームサポート)がフレームに固定されています。
ベッドへ移乗する際には、この固定された肘掛けが「高い壁」となって立ちはだかります。
この壁を越えるためには、介助者が利用者さんを「高く抱き上げて」移動させなければなりません。
重力に逆らって人を持ち上げる動作は、腰への負担が非常に大きく、多くの介助者が腰痛に悩まされる原因となっています。
車椅子の足置きが壁にぶつかる!原因と解決策

自宅の廊下やトイレの入口で、足置き(フットサポート)を「ガツン!」とぶつけてしまったりしたことはありませんか?
一般的な車椅子は、屋外で靴を履いて使うことも想定されているため、足置きが前方に大きく突き出しています。
広い病院では気にならなくても、スペースの限られたご自宅の廊下では、この「前の出っ張り」が大きな障害物になってしまうのです。
「すぐに疲れる・ズレ落ちる」は車椅子が合っていないサイン

「座っていると体が斜めに傾く」
「お尻が痛くなる」
こうした悩みは、車椅子のサイズや調整が体に合っていないサインです。
標準型車椅子の多くは、座面の高さや背もたれの張り具合を調整できません。
体に合わない靴で歩くと疲れるのと同じように、体に合わない車椅子に長時間座り続けることは、正しい姿勢保持ができず、床ずれ(褥瘡)のリスクを高めてしまうこともあります。
多機能車椅子の選び方:悩みを解決する3つの機能
1. アームサポート跳ね上げ(ウイング)

1つ目は、肘掛けを上に跳ね上げたり、取り外したりできる機能です。
この機能があれば、ベッドと車椅子の座面をフラットにつなげることができます。
利用者さんの体を持ち上げる必要がなく、お尻を少し浮かせて「横へスライドさせる」だけで移乗が完了します。
抱きかかえない介助は、介助者の腰を守るだけでなく、利用者さんにとっても「落とされるかもしれない」という恐怖心や、身体への圧迫感を減らすことにつながります。
2. フットレスト開閉・着脱(スイングアウト)

2つ目は、足置きを左右に開いたり、取り外したりできる機能です。
この機能を使うことで、車椅子をベッドやトイレにギリギリまで近づけることができます。
また、足元のフレームがなくなるため、テーブルや机の奥までしっかりと入り込めるようになります。
正しい姿勢で食事や作業ができるようになることは、無理な体勢による疲れや体の痛みを防ぎ、自立した生活を送るために重要です。
足こぎで移動したい方にとっても、足の可動域を広げられる大きなメリットがあります。
3. 背張り(背テンション)調整機能

3つ目は、背もたれの張り具合を自由に調整できる「背張り調整機能」です。
病院などでよく見かける車椅子の背もたれは、一枚の布が張られただけの作りになっているため、座る方の背中のラインに沿わず、姿勢が崩れる原因になることがあります。
ご高齢で背中が丸くなっている(円背)方の場合、背もたれと背中の間に隙間ができたり、背骨の一部だけが強く当たって痛くなったりします。
その痛みを避けようとしてお尻が前に滑り出し、いわゆる「ずっこけ座り」になってしまうのです。
背張り(背テンション)調整機能が付いた車椅子なら、背もたれの後ろにあるベルトを緩めたり締めたりすることで、背中のカーブに合わせて形状を合わせることができます。
背中全体を広く支えることで、圧迫感が分散され、包み込まれるような座り心地になります。
姿勢が安定すれば、食事中の誤嚥(飲み込みの失敗)リスクも減らせますし、長時間座っていても疲れにくくなります。
※多機能車椅子であっても、背張り調整機能がついていない機種もあるため、選ぶ際は事前の確認が必要です。
多機能車椅子おすすめ5選【福祉用具専門相談員厳選】
シン・ウルトラ NA-SU2W/NAH-SU2W┃日進医療器
特徴
・調整不要で理想的な姿勢を保てる「3Dバックサポート」
・空気入れ不要で乗り心地の良いノーパンクタイヤ「エアリー」を標準装備
・移乗がスムーズに行える、アームサポート(肘掛け)跳ね上げ
・脚部スイングアウト機能を搭載
・駐車ブレーキレバーの長さやフットサポートの高さを、工具なしで簡単に調整可能
重量:14.3kg(自走) / 13.1kg(介助)
サイズ
全幅:55cm(自走) / 49.5cm(介助)
全長:100cm
座幅:40・43cm
前座高:42cm
座奥行:38cm
耐荷重:100kg
素材:アルミ
カラー:テツコン(鉄紺)、カキチャ(柿茶)
ネクストコアⅡ-マルチ NEXT2-31B/NEXT2-41B┃松永製作所
特徴
・体格に合わせて、座奥行を標準の38cmから34cmへショート調整できる機能を搭載
・円背の方などご利用者様の姿勢に合わせて細かく調整できる「3D立体スリングシート」
・ベッド等への移乗が安全かつスムーズに行えるアームサポート跳ね上げ
・脚部スイングイン&アウト機能を搭載
・パンクの心配や空気入れの手間がないハイブリッドタイヤ(ノーパンク仕様)をラインナップ
重量:14.6kg(自走) / 13.6kg(介助)
サイズ
全幅:56・58cm(自走) / 55.5・57.5cm(介助)
全長:95cm
座幅:40・42cm
前座高:43cm
座奥行:38cm(34cmに調整可能)
耐荷重:100kg
素材:アルミ カラー:ブルー(M-15)、グリーン(M-16)、オークル(M-17)
グレイスコア-マルチ GRC-31B/GRC-41B┃松永製作所
特徴
・業界最高クラスとなる56cmのバックサポートを採用し、長時間でも疲れにくい快適な座り心地を実現
・円背の方などご利用者様の姿勢に合わせて細かく調整できる背張り調整や、座奥行調整(38cm/34cm)機能を搭載
・ベッド等への移乗が安全かつスムーズに行えるアームサポート跳ね上げ
・脚部スイングイン&アウト機能を搭載
・パンクの心配や空気入れの手間がないハイブリッドタイヤ(ノーパンク仕様)を標準装備
重量:15.5kg(自走) / 15.1kg(介助)
サイズ
全幅:56.5・58.5cm(自走) / 56・58cm(介助)
全長:95cm
座幅:40・42cm
前座高:43cm
座奥行:38cm(34cmに調整可能)
耐荷重:100kg
素材:アルミ
カラー:M-12、M-13(ブラック)、M-14(エンジ/ワインレッド)
CRT-SG-3 / CRT-SG-4┃ミキ
特徴
・軽さとコンパクトさを両立した超軽量「カルッタ(CRT)」シリーズの上位モデル
・ベッドなどへの移乗をスムーズに行えるアームサポート跳ね上げ
・脚部スイングアウト機能付き
・空気補充の手間やパンクの心配がない「ノーパンクタイヤ(ハイポリマータイヤ)」を標準装備
・女性や力の弱い方でも扱いやすい、自走式11.7kg・介助式11.3kgという多機能ながら圧倒的な軽さを実現
重量:11.7kg(自走) / 11.3kg(介助)
サイズ
全幅:55cm(自走) / 49cm(介助)
全長:96cm
座幅:40cm(座シート幅は36cm)
前座高:43.5cm
座奥行:38cm
耐荷重:100kg
素材:アルミ
カラー:A-16(紺)など
WAVITRoo+ (ウェイビットループラス) WARP22/WARP16┃カワムラサイクル
特徴
・腰上から膝裏までを支える独自の「LAVICサポート」により、無理のないラクな姿勢を保持
・フレーム背面の「ブリッジ」がシートのたわみを防ぎ、快適な座り心地を長期間キープ
・ベッド等への移乗がスムーズに行えるアームサポート跳ね上げ
・脚部スイングイン&アウト機能付き
・パンクの心配や空気入れの手間がないノーパンクタイヤを標準装備
重量:14.8〜15.2kg(自走) / 14.2〜14.6kg(介助)
サイズ
全幅:57・59・62cm(自走) / 53・55・58cm(介助)
全長:99cm
座幅:40・42・45cm
前座高:43・45・47cm
座奥行:40cm
耐荷重:100kg
素材:アルミ
カラー:ファブリック、3Dメッシュ
「スライディングボード」の組み合わせがおすすめ
ここまで、多機能車椅子の「肘跳ね上げ機能」が移乗に役立つをお伝えしてきました。
今の移乗介助で「腰への負担を極限まで減らしたい」「一人で乗り移れるようになりたい」と考えているなら、多機能車椅子と合わせて「スライディングボード」の導入もおすすめです。
「持ち上げない」移乗介助につながる
スライディングボードとは、ベッドと車椅子の間に橋を架けるように渡して使う、表面が滑りやすいボードのことです。
多機能車椅子の肘掛けを跳ね上げて障害物をなくし、このボードを設置することで、移乗の方法がに変わります。
女性や小柄な方でも、スムーズに移乗させることが可能になります。
「抱きかかえられる際の密着や圧迫感が苦手」という利用者の方にとっても、精神的・身体的な負担が少ない優しい介助方法と言えます。
多機能車椅子があってこその「スライディングボード」
この便利なスライディングボードですが、「肘掛けが跳ね上がる車椅子」でなければ使うことができません。
標準型車椅子では、固定式の肘掛けが邪魔をして、ボードを横に渡すことができないからです。
今回ご紹介した多機能車椅子を選ぶことは、単に機能が増えるだけでなく、「便利な福祉用具を使うための準備が整う」ということにもつながります。
将来的に身体状況が変化しても、様々な福祉用具を組み合わせることで在宅生活を続けられる可能性が広がります。
この2つを組み合わせることで、移乗介助の負担軽減につながると思います。
まとめ:車椅子見直しは、介助負担を減らすひとつの方法
「ベッドへの移動で腰が痛い」「狭い廊下で足置きがぶつかる」といった日々のお悩みは、使っている車椅子の種類を見直すことで、楽になることもあります。
- 肘掛けが跳ね上がる: ご本人を持ち上げず、横にスライドするだけで移乗できます。
- 足置きが開く・外せる: トイレやベッドに近づけて、足元の引っかかりを防ぎます。
- 背張り調整ができる: 背中にフィットし、長時間の座り疲れや姿勢の崩れを予防します。
さらに、移乗介助の負担をさらに軽減する方法として、「スライディングボード」を組み合わせて使うことも可能です。
ご本人を持ち上げずに済むため、介助する方・される方、双方の身体的・精神的な負担を減らすことにつながります。
体に合わない車椅子での無理な動作は、腰痛や思わぬケガの要因になることもあります。
まずは気になった車椅子の詳細をチェックして、ご自宅の環境に合いそうな1台を探すところから始めてみませんか。
本記事がお役に立っていただけますと幸いです。
2015年に福祉用具専門相談員の資格を取得。北海道を拠点に10年以上、現場での選定・適合に携わっています。
介護用品は「高機能=正解」ではありません。カタログスペックよりも、「使う人の身体や環境に合うか」を最重視しています。
当ブログでは、メリットだけでなく「こういう人には合わない」という注意点も発信しています。後悔しない用具選びをお手伝いします。
保有資格: 福祉用具専門相談員 / 福祉住環境コーディネーター2級
詳しいプロフィールはこちら
X(旧Twitter): https://x.com/fukushiyouguch






